翻訳で気を付けること―“等価性”―(リーガル翻訳士の裏側・8)

翻訳でまず気を付けるべきポイントは何だと思いますか?


当たり前のことなのですが、それは、原文の構造をしっかりと捉えることです。
訳語をどうするか、受動態にするか、能動態にするかはその後の話です。
とにかく、原文をしっかりと読み解くことが不可欠です。
なぜなら、翻訳とは、「原文と訳文の等価」が品質に影響するからです(“等価”に関しては翻訳学において様々な議論がありますが、それは今は置いておきます)。
原文を間違って解読すると、原文と訳文の等価を絶対に実現することができないのです。
初めの一歩である、原文解読を疎かにしないこと。
これが、翻訳で一番初めに気を付けることです。
原文読解を正確にするコツは、直訳調でまずは原文を解読することだと思います。
初めから自然な日本語(英日翻訳の場合)、英語(日英翻訳の場合)に訳しようとすると、原文の正確な意味から外れていきがちになります。


たとえば、
[All the roads were jammed with cars headed for hometowns. ](Genius 5th)
という例文で検討してみます。
ここで、[jam]は、「(場所)を塞ぐ」という他動詞です。
辞書に載っている意味は、
「故郷へ向かう車でどの道路も渋滞していた。」
となっています。
とても自然な日本語で、かつ、「原文と訳文の等価」も保持されています。
ですが、その訳文に至る前に、なすべきは、原文の正確な解読です。
直訳調で訳すると、次のようになります。

「全ての道路は、塞がれていた、車で、故郷へ向かっている。」

もう少し分かりやすい日本語にするなら、

「全ての道路は、故郷へ向かう車で塞がれていた。」

となります。
どういう状況なのか、そのイメージを持つことができたと思います。
あとは、このイメージを基に、可能な限り“等価”で自然な日本語に翻訳をする必要があります。
上記辞書の日本語は、そのどちらも満たす良い訳だと思います。

出来上がった訳文の自然さだけで翻訳品質の良し悪しを判断することはできませんし、してはいけないのは、「原文と訳文の等価」が翻訳品質に影響しているからなのです。

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